スモールワールド
この3月にめちゃくちゃ偉い人が退職した。
よくしゃべるおばちゃんで、職場のムードメーカーで、資格を持っていて、わからないことは教えてくれたしとてもお世話になった。
めちゃくちゃ偉いのにペーペーの若者に仕事の相談をしてくれる。
「これどう思う?」「一緒に見て」と人当たりの良い人だった。
間違いなく職場にとってかけがえのない人で、会社にとっても大事な人だったと思う。
早期退職だったのだが、そんな良い人がいなくなったら職場はどうなるんだろう、もうわからないこと聞けないし、職場の雰囲気も変わるだろう。
と思っていたが、今日も職場はいつも通りまわっている。
あの人がいないと寂しいなとふと思うことはあれど、
仕事中にその人が話題に上がるような場面なんて殆ど無いし、
普通に業務はまわっている。
なんならその人の代わりに、職場の先輩がその偉い人ポジションに昇格した。
言ってしまえば変わらない毎日が続いている。
あんなに偉い人が辞めてもこうなのだから、
私が辞めたって職場が困ることはないのだ。
誰がいなくなってもこの社会はまわる。
お腹は空くし眠くなる。
生活は続く。
私は来週、「今年度で辞めます」と言う。
くしゃくしゃのレシートは「豊か」であるか?
「豊か」ってなんだ?
ヤマタノオロチ外伝という演劇に出てきた台詞である。
高校生の時、私は演劇部に所属していて、この言葉を発したことがある。
作中で「豊か」について結論が出たか否かは覚えていないのだが(私は過去のことをすぐに忘れる)、
当時高校生の私には答えが出ない問いであった。
クソデカクエスチョンすぎる。
「幸せとは何か」と同じ類の質問である。
この十人十色、千差万別の答えが出そうな問いは大人になった今も私に付き纏っている。
先日、本屋に行った。
普段は本を読まないが、2ヶ月に1回くらい本を読みたくなる時期があるのと、最近影響を受けているYouTuberが読書家ということを知り、どれ紹介されていた本でも読むかと本屋に向かった次第である。
目当ての本を手に取る。1500円。むむ。
普段本を読まないので本の値段にはやや足踏みをしてしまう。
自分に合うかわからない本に1500円。むむ。
私はふとメルカリを開く。
あわよくば安く売っていないだろうか。
しかしほとんど売れていてほぼ定価でしか出品されていない。
まぁ0から1を生み出せる人が心血注いで作ったものにはしっかり対価を払わなければならない。
財布と己の信念を天秤にかけ、私はえいやと本を手に取った。
あとはなんか気になったエッセイ(500円)を1500円の本に重ねてレジに並ぶ。
私の前にはグレーの汚れた作業着につるつる頭のおじさんが並んでいた。
本屋というよりもコンビニで立ち読みをしていそうな風貌である。
おじさんがレジに本を出す。
何買うんだろうと視線をレジにやると、分厚い文庫本を4冊も出しているではないか!
おじさんは財布は持っていないようで、ポケットから一万円札と本屋のポイントカードをトレーにぶっきらぼうに出す。
「5600円です」
「1万円からお預かりします」
レジのお姉さんが業務をこなしていく。
5000円!!
おじさん、本に5000円を惜しげもなく出せるの!?
1500円に躊躇する人間のなんと貧しいことかと目を丸くする私をよそに、
おじさんはエコバッグを取り出し購入した4冊を大事そうにしまっていく。
お釣りをトレーからごつい手にじゃらじゃらと流し、それらをまた作業着のポケットにダイレクトインした。
レシートはくしゃくしゃである。
そうしておじさんはのしのしと歩きながら帰って行った。
あの人は豊かである。
幸せって不平等だなと思った話
なんかちょっともうやりきれなくなった。
だから書く。
20代後半の女です。
「プツン、と何かが切れる音がした」
という表現ができる瞬間が実際にあることを初めて知った。
おそらくこれを読んでる人にはくだらないと思われるに違いない。
私より長く生きておられる方にとっては尚更だ。
だがもうやりきれない。私は若いのだ。若いので許していただきたい。
若さと馬鹿さは大事にしろと教わって社会に出たのだ。
だからこれから書くことについてあまり厳しい言葉はご遠慮願いたい。
先日、久しぶりに同期だけの研修があった。
同期と言ってもコロナの関係で人数を分けて行われた研修だったので、私と同じ研修を受けたのは数人だった。
今回、その数人の中にいたA子について書かせていただきたい。
A子は背が低く小太りで、職場での評判は「あぁ…あの子…うーん、頑張ってはいるよ」って言われる感じの子。
di○ney版ノート○ダムの鐘に出てくる主人公のような顔面で
同期の中ではやや浮いてて
特別仲のいい子はいなくて
性格は悪くはない。良い子。
でも裏ではやや鼻で笑われている。
そんな感じの子。
研修の日、
A子は仕事が忙しかったのかやや遅れてやってきた。
その彼女を一目見た瞬間である。
プツンと切れた。
遅れてきたA子は、
汗ばんで脂ぎった顔で
しっちゃかめっちゃかなボサボサの髪の毛で
てへへ、みたいな可愛くない顔をしながら
席についた。
なんだ。
なんだその身なり。
なんでそんな不潔さをうっすら感じるくらいの身なりで平気なんだ。
なぜ私がこの瞬間こんなにA子のことが気に障ったのかというと、
彼女が結婚しているからである。
つまり彼女には「旦那」という自分を認めてくれる存在がいるのだ。
こんなめちゃくちゃな身なりでも
家に帰れば彼女を愛してやまない旦那が
「おつかれさま♡今日もかわいいね♡」
などと鼻の下を伸ばしながら彼女の頭を撫で、キスをして、セックスしていると思うと何ともやるせない気持ちになってしまった。
しかも旦那は家事全般を進んでしてくれて、彼女の家族とも大変仲の良い年上の男と聞いた。
なんだそれ。
なんだこれ。
嫉妬と言われるとそうかもしれない。
いやもう、わかってるよそんなことは。
十分わかってる。
彼女に良いところがあるのもわかっている。
わかってるけど、
わかってるけどやりきれない。
重い奥二重で小さくつぶれた鼻で吹き出物だらけの顔面。
眉毛も手入れされていなければリップも塗っていない。
なんだそれ。
なんだこれ。
Twitterで報われない美少女、美人を多数見てきたのでやるせなくなってしまった。
あの子達が血反吐を吐く思いで情報収集し、サラダとオートミールとサラダチキンを食べ、サプリを飲み、自分の容姿や中身を磨き、多額の費用で整形したりしているのに、
寿司10皿とラーメン1杯を食べ、デザートまで完食する彼女の左薬指には結婚指輪が光っている。
人生で幸せになるのはなんと不平等なのか。
これが人生勝ち組か、あーあ。と芝生の上で大の字になってしばらく雲の流れでも見ていたい気分である。
もちろん彼女も彼女なりに可愛くなろうとしているんだろうけど。
こんなことを吐き出してしまう私は醜いんだろうけど。
それなりに見栄えを良くしようと努力している自分も含めてやるせなくなってしまった。
容姿についてや食べ物を食べたいだけ食べることについて以上のようなことを書くのは時代遅れであり、
多様性が重視されつつある世の中でこんなことを書くとバッシングを受けるに違いないが、
自分を含めたさまざまな女の子達が報われないやるせなさを感じて書き留めた。
みんな幸せになれるといいな。